続・2020私的途中下車10選

(この記事は、2021年1月10日に公開、2月10日に追記したものです。)

 

※この記事は下車作品を審査したり、優劣をつけたりすることを目的としていません。ご理解のほどよろしくお願いいたします。

※この記事はいつにも増して自分語りと的外れな考察を多分に含みます。苦手な方はブラウザバック推奨です。

※万が一不快な表現等ございましたら即座に対応いたしますので、その場合はお手数をおかけしますが私の方までお知らせください。

 

どうもゆっけりんです。

 

以下の記事の続きから始めたいと思います。

yukkerin.hatenablog.com

前回の記事では2020年の私的途中下車について9個振り返りました。この記事の反響についてですが、なんと3名の作者様から畏れ多いお言葉をいただきました。拙著が憧れの作者様の目に留まることは恐ろしいことです。本当にありがとうございます。

 

さて、この記事では今回の私的10選最後の作品について取り上げさせていただきます。本家「音MAD作者が選ぶ今年の音MAD10選」のアンタッチャブルレコードを塗り替えた、「大変な途中下車シリーズ」最高峰の作品です。

 

10. Glow Map × 大変な途中下車シリーズ【鉄道M@ster】

サムネから尋常じゃないオーラを発していたので、実を言うと緊張して中々見れなかったんですよね。

結局投稿当日には見られなくて、翌日の深夜1時になってやっと見ることが出来ました。

視聴後のことはあまり覚えていません。Twitterでは何かよく分からないことを喋っています。予想通り強大なオーラに飲み込まれてしまったんだと思います。

今見ると、あまりの完成度の高さに涙腺が崩壊しそうになります。技術力もさることながら、センスが溢れすぎている。技術力は努力でどうにかなるかもしれませんが、センスは努力だけではどうしようもないんですよね。生まれつき感受性が豊かで、このステージに至るまで色々な要素を吸収して成長してこられた方なんだと思います。まさにアウトプットの天才、そしてインプットの天才であられるお方だと思います。

くろしおりさんに憧れて下車作者になった人は多いと思います。僕もその一人です*1。思えば、どうすればくろしおりさんに近づけるかをずっと模索してきた作者人生でした。過去の作風にそれが現れていると思います。

でも結局それはマネしているだけに過ぎないんですよね。「オマージュ」と言えば聞こえは良いですが、凄い方の一番煎じをマネしても味のしない出がらしMADが出来上がるだけで、あまり意味はありません。作品を視聴後に頻りに反省したのは、この真理にやっと気づいたからだと思います。鋭い刃でグサグサやられている感覚でした。

 

自分語りが過ぎました。申し訳ありません。ここからは作品の好きなポイントを具体的に述べていきたいと思いますが、この作品は尋常じゃなく完成度が高い作品なので、章立てをして順番に触れていきたいと思います。

その前に、この作品は作者様による解説がありますので、私の記事よりもそちらを見ていただくことをおすすめします。

287mia.hateblo.jp

287mia.hateblo.jp

 

 (2/10追記:1/23にこの作品の後日談(前編)、1/26に進捗・未採用カット集が投稿されました。全人類観ましょう。これほどまでに貴重な財産はありません。)

ch.nicovideo.jp

www.nicovideo.jp

 

 

- 原曲

原曲は765 MILLION ALLSTARS「Glow Map」です。

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アイドルマスター」シリーズのアプリゲーム「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」のリリース3周年を記念して作られた曲です。2020年6月14日発表、7月15日配信開始と、非常に新しい楽曲なんですね。

薄明をイメージさせるようなドラマチックで明るい曲調と、アイドルたちが未来へ羽ばたこうと願う内容の鮮烈な歌詞が特徴です。

あまりにも良い曲すぎます。ミリシタをプレイしていない僕でもプロデューサー気分になってしまいます。曲を通じてかなり抑揚が付いているので中々音MADにしにくいかと思いがちですが、そのハードルを楽々越えるほどの魅力がある曲です。本当に最高の原曲だと思います。

なお、Glow Map × 私的レールスターという組み合わせはこの作品が初出ではなく、以下の作品が親作品に設定されています。

www.nicovideo.jp

以下の作品も同様に親作品に設定されています。

www.nicovideo.jp

 

- 構成

この作品は私的レールスターです。およそ次のような構成となっています。

寝台特急サンライズ瀬戸・出雲 (0:00-0:23)

・特急ひたち (0:23-0:33)

・特急ロマンスカーはこね (0:33-1:02)

・サビ(1:02-1:47) 特急はるか、宍道駅、車窓オールスター、特急ラビュー、北陸新幹線、特急ひだ、JR北海道・四国・九州の列車オールスター、特急花嫁のれん、特急くろしお、夕張支線、特急リバティ

・特急ひのとり・しまかぜ (1:47-2:09)

東海道新幹線こだま (2:09-2:34)

北陸新幹線 (2:34-3:08)

こうして見ると、現代日本の名特急を網羅しているということがよく分かります。先ほどの記事によると、「意中の異性と乗りたい列車私的」がコンセプトとのことです。

ここではパートごとに作品を追っていきたいと思います。

 

- 寝台特急サンライズ瀬戸・出雲

この作品は、上りサンライズ瀬戸・出雲の車内から始まります。

車窓に映る美しい星空、そして夜が明け、朝へと至る。ピピピとアラームが鳴る。まどろみの中で車掌さんのおはよう放送が聞こえる。未だにサンライズに乗ったことのない僕でも旅情に浸れるパートです。

見上げた明けの空に 思い重ね そっと紡いだ Wish Song…

「さわやかな朝、新しい一日のはじまり」というイメージで命名*2、製造された寝台特急サンライズ。まさにこの歌詞にぴったりの列車ではないでしょうか。

上り東京行サンライズというのもポイントです。サンライズは東京と高松(琴平)・出雲市を結ぶ寝台特急であり、下りは地方への観光または帰省、上りは東京への観光または帰省の需要を満たすという性質を持ちます。「旅」をテーマとした作品は「地方への観光」を想起させる下り列車が用いられる場合が多いのですが、ここでは逆に上り列車が用いられています。

このような感じで、この作品にはよく上り列車が登場します。この件については後述したいと思います。単に持ち合わせの素材の問題かもしれませんが...

 

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2/10追記:前述の後日談では、このパートについて以下のような言及があります。

サンライズは今風な設備を備えた次世代の夜行列車として、何かと一目置かれる存在です。
動画は、そんな夜汽車で朝を迎えるシーンから始まり、後に続く原曲の歌詞「見上げた明けの空ー」へ繋がります。

重い瞼をこすりながら寝台列車で朝を迎える風景を演出したつもりです。

冒頭にサンライズを持ってきたのは、上記のような「物語の始まり感」を演出したい欲がったのと、
イントロ後に続く「見上げた明けの空に思い重ねー」が夜行列車の夜明けシーンとよくマッチするなと思ったため。

このパートについては、制作者さんが意図した通りのことを汲み取ることができたのかなと思います。サンライズ乗りたいですね。乗りたいのは山々なんですが、自分の場合、二度寝していつの間にか東京到着…みたいなことが起こりそうで困ります。

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- 特急ひたち

去年3月の常磐線全線運転再開に伴い、東京仙台間の在来線特急が9年ぶりに復活したとして話題になった列車です。

ここで出てくる列車はその仙台行ひたち。上野水戸勝田...と停車駅を連呼して行くシンプルな構成となっていますが、セリフ合わせが気持ちよくて聞いてて楽しくなれるパートです。E657系を撫でるように見つめているかのようなカメラの動きがめちゃくちゃ好き。旅の思い出が走馬灯のように駆け巡る様子を表現しているように思います。

パートの終わりで"The stop after Yumoto will be Hakone-Yumoto."というシーンに至り、湯本つながりで特急ロマンスカーへつながります。

 

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2/10追記:後日談では、このパートについて以下のような言及があります。

このシーンでは、1つめの見せ場となる後のパートへの繋がりを意識して、全体的に大人しく編集しました。

「ひたち号の仙台ゆき」という要素は、
全体的な着想にもあった「旅」を想うことについて、何かと強い意義を持つのではないかと思います。

確かに常磐線全線運転再開、東京仙台間のひたち復活という線路が繋がる特急が繋がるという出来事は、旅が出来る幸せを想起させるという点でシンボリックな出来事です。旅とは、思いを繋いで1つの形にまとめ上げていく営為なのではないか、と大言壮語的なことを感じました。

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- 特急ロマンスカーはこね

ここがヤバい。ロマンスカーというだけで激アツのアツなのに、この眼福パートが29秒も持続するというのが最高です。小田急好きとしてはこれほど拝めるパートはないです。本当にありがとうございます。

このパートはVSE/GSEの車内チャイム(ロマンスをもう一度)がマッシュアップされるところから始まります。そしてこのチャイムがそのまま音合わせにも使われています。Please kill my love風の動画とも相まって非常に透明感ある雰囲気になっており、良質な旅情に浸ることができます。「VSE乗車位置」アニメーションも最高です。

あじさいや雪のない富士山、美しく澄んだ河川等の映像素材が多く使われていることから、個人的には6月の梅雨時をイメージして作られたパートなのかなと感じます。箱根と言えば日本屈指の紅葉スポットとして有名ですが、ここでは梅雨時の素材が多く使われていることによって、従来とはまた違うロマンスカーの魅力が引き出されているという感じがします。伝説の作品はやはり目の付け所が全然違います。圧巻です。

そしてここでも上り(新宿行)の素材が使われています。僕は根が田舎者なので、パート終盤の新宿の映像を見て高揚感を覚えます。美しい沿線風景が広がる郊外から大都会へと一気に駆け上がっていくさまは、僕が小田急に惹かれてきた理由の最たるものです。僕が処女作(Super Zama Za-ma)を作った時の初々しい気持ちを思い出させてくれるようなシーンです。

このパートを見ると、やはり小田急は最高の舞台装置だなという風に感じます。早くロマンスカーMAD作らなきゃ。

 

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2/10追記:後日談では、このパートについて以下のような言及があります。

常磐線の「湯本駅」から、小田急線の「箱根湯本駅」へ繋がり、ロマンスカーのパートへ入ります。

ロマンスカーのパートから、図形がわちゃわちゃします。
背景の格子線や四角形の表現は「Glow Map」のジャケットを意識したつもりだったんですが、全体的には
「Please kill my love」っぽいという感想を多く頂戴しました。見返すとめちゃめちゃそれだなと自分でも思います。

リズムに合わせて遷移する図形には、小田急沿線で撮った写真をクリッピング
ロマンスカーを象徴する「赤」、富士山や透き通った空、そして瑞々しい湧水を思わせる「水色」、梅雨から初夏にかけて沿線を彩る紫陽花の淡い「紫色」などをちりばめました。

勝手に「Please kill my love風の動画とも相まって〜」とか言ってしまいました。無知が出ました。失礼しました。

確かにGlow Mapのジャケットは、斜め格子の中にミリオンライブのキャラクターが登場するデザインとなっています。対してPKMLは2015年の音MAD10選で1位となった、音MAD作者なら知らない人はいない伝説の作品です。やはり音MAD、動的な要素が「PKMLに似ている」という印象を強くしたかもしれません。

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- サビ(前半)

遥かな空へ出かけよう 信じる絆を抱いて

サビではまず関空特急「はるか」と「宍道(しんじ)」駅が登場します。「遥かな空へ出かけよう」を女声放送、「信じる絆を抱いて」を男声放送にそれぞれ歌わせていると思うのですが、特に後者の男声がコロナ禍に生きる私たちの心に沁みてくるようで涙腺が緩みます。本当に美しい歌声です。

 

みんなの気持ち響き合って地図を作ってく

特急ラビューから北陸新幹線、そして日本全国に赤ピンが広がっていく表現へ次々と移り変わっていく場面ですが、視点に奥行きを持たせた、言わば"Z軸のシーンチェンジ"が展開されています。どうやったらこんな動きができるのか全く見当がつきませんし、もし実現できても違和感が勝ってきそうだなと思うのですが、この場面ではそういった違和感は全くありません。恐ろしい技術力です。

 

最高の一瞬を何度も超えて行くんだ

あたりが静寂に包まれる中、踏切の音だけがカンカンと鳴る。やがて電車の荒々しいモータ音が近づいてくる。その音の主に向けてピントを合わせる。シャッターを切る。

我々が息をのんで待ち続ける「最高の一瞬」。このシーンではその一瞬に対しての"気迫"が、音声・動画の両方で再現されています。この「カンカンカンカン ピピッ カシャッ カシャッ カシャッ」という環境音が原曲のリズムと同期しているので、凄くハマってて気持ちが良い。自然に体が揺れてしまいます。

あとは「超えていくんだ」のところの映像表現。映像中に出現する四角い枠は写真のフレームを連想させますが、橋梁や鳥居、そして列車がフレームの上に飛び出してくることで、「何度も超えていく」というフレーズを印象付けています。こんな表現どうやったら思いつくのか?

 

そして特急「ひだ」の車内放送が入ります。重厚な雰囲気の車内や高山の美しい景色が旅情を増幅させます。

 

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2/10追記:後日談では、このパートについて以下のような言及があります。

「はるかな空へ 出かけよう 信じる絆を抱いて」の人力ボカロに合わせて展開していくシーンです。

はるか→関空特急はるか号、信じる→宍道る(JR山陰本線の駅名)などの言葉遊びをしています。
人力ボカロには全国の自動放送で聴ける声を適宜使用しました。

楽曲のサビにあたる部分なので、なるべく派手に色とりどりになるよう編集したつもりです。
あと後半に何かと出てくる白石紬さんが初めて出てくるシーンでもあります。

1/10の私は全く触れませんでしたが、ここのシーンは動画の技術も凄すぎます。サビに差し掛かって曲が動き出すのと同時に、カメラワークがダイナミックになります。ここのカメラワークは、おそらくMV映像から抽出したものだと思われます。凄い好き。

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あとは「水彩画風の淡い背景」と「カラフルな白石紬さんの衣装」とのコントラストも美しいです。音MAD、特に下車においてはギツギツな配色が好まれがちですが、この作品はそうした潮流とは別のところにあります。「色とりどり」だけれども、どこか麗しく、奥ゆかしい。くろしおりさんの傑出したセンスの成せる業だと思います。

 

Z軸の映像展開です。(中略) 車窓シーンからシーンチェンジするところは、元映像から出力した静止画を切り抜いて使っています。

もう少し映像に「飛び出す感」が欲しかったので、四角形を円形配置したやつとマップピンのアイコンを使って地図のモーションが現実世界に透過されたような具合にしました。後の歌詞「地図をつくってく」の前座です。

改めて見ると、この表現は異次元過ぎますね。後日談で詳しく解説されているのですが、三次元どころか一次元のモーションすら危うい僕からしたら、構造を理解するのが困難なシーンです。立体感覚が欲しい。

 

最高の一瞬を求めて、待ちわびた列車が奥の方から姿を現したときのドキドキ感。そんなものが伝わったらこのシーンは成仏できます。

空気の作り方が凄いシーンです。環境音の効果も相まって、多くの人にこのドキドキ感が沁み渡ったのではないでしょうか。極細ゴシックの使い方も非常に絶妙で、作者として本当に参考になります。

 

鉄橋の処理がハチャメチャ面倒でした。ディーゼルの列車が走る路線なので、架線柱が立ってなかったりしたのがせめてもの救いでしょう。

下原八幡神社は、境内に線路が通ってる不思議な神社です。鳥居と列車を1つの風景に収めることができます。
鳥居で立体感を出したかったので、フレームとテキストを斜めクリッピングで一部消しています。鳥居で立体感を出したかったので、フレームとテキストを斜めクリッピングで一部消しています。

こういう「切り抜き」や「クリッピング」というのは地味でキツい作業なんですよね。しかし、面倒くさがって手を抜いてしまったら終わりです。作品を死なせないためには細部までこだわり抜くことが重要だ、ということを身をもって体感しました。

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- サビ(後半)

ここから舞台は日本全国へと遷移していきます。

始まりのあの日から (ずっとそばで)
幾つもの景色を一緒に過ごしたね

最初のJR北海道パートでは維持が困難な路線に指定された釧網本線や雪をかき分けて走る札幌圏の通勤列車など、北海道の鉄道風景が登場します。そして一瞬JR四国の「アンパンマン号」が出てきた後、JR九州の「ゆふいんの森」が登場します。昨今の情勢が進行していく中で、こうした「当たり前の景色」が失われかけていることに気付かされます。

 

その後は花嫁のれんとくろしおのキャッチコピー、夕張支線廃止のさよなら放送、特急リバティのスカイツリー放送、大橋さんの自己紹介放送など*3、全国各地の名放送が流れていきます。行きたいところには行けるうちに行っておかなきゃダメですね。今となってはそのことが痛いほど分かります。

 

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2/10追記:後日談では、このパートについて以下のような言及があります。

映像面では、今までに撮り溜めた風景を見返しているようなものを意識した演出をしました。
古いアルバムを紐解くように、ちょっとアナログちっくな感じを意識しています。写真は最近撮ったものですけど。

映像面では、ここから写真を振り返る媒体が移り変わります。

上のシーンまでは、少し古臭い処理をかけた映像を流していましたが、人が思い出を振り返るための手段も時代によって変わるよねということで、古いアルバムっぽい雰囲気から、写真共有アプリ「インスタグラム」風の表現へと変遷させました。

映像媒体の進化には目覚ましいものがあります。ほんの20年前まではVHSを中心としたアナログテープが主流だったのが、デジタル化・パソコン普及の波に押されてDVD・BDそしてHDDといった磁気ディスクが世界を席巻するようになりました。更にはTwitterインスタグラムなどのSNSが普及したことによっていつでもどこでも映像を共有できるようになり、「旅」の形も大きく変容しました。このパートは、そういった旅のスタイルの変化を「技術的進化」という側面から想起するパートです。今後ARやVRなどの技術が進展するにあたって、旅のスタイルも同様に進化し続けていきそうです。

また、大橋さん放送のひとつ前の放送は「特急『能登かがり火号』でのアナウンス」とのことです。分かりませんでした・・・(2/10追記はここまで)

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- 特急ひのとり・しまかぜ

西の私鉄特急の雄・近鉄特急。2012年にデビューした特急しまかぜが従来とは一線を画した、乗客本位の革新的な観光特急として好評を博していることや、去年3月に名古屋大阪間の新主役・新型特急ひのとりがデビューしたことで話題となっています。

ここで出てくる列車はそのしまかぜとひのとりです。

まずはひのとり。先ほどのロマンスカーの時と同様、原曲と車内チャイムのマッシュアップから入ります。ここで画像部分がクリッピングされて隠れていた文字が現れるのですが、ここにしれっと焼き肉食べたいと書いてあってて少し笑ってしまいます。

ひのとりが「飛び立つ」表現も好きです。ロゴマークの下に2本線が出て、ロゴマークの動きに合わせてシュッと消えることで疾走感が表現されています。細かい表現ですが、これがあるとないとでは大違いです。細部までこだわり抜かれていることが分かります。

次のシーンでは、しまかぜがまるで水彩画のような透き通った表現で登場した後、しまかぜ車内のカフェで提供されるグルメが「メニュー表」を模した形で現れます。「移動も楽しめる」というしまかぜの魅力がここに詰まっています。このシーン、サビの盛り上がるところから一気に静かな曲調となるので構成に悩みが生まれそうなのですが、この作品ではそういったことは全く感じさせません。ここから後の感動のフィナーレへとつながっていきます。

 

- 東海道新幹線こだま

無限の空に何度でもキラめく夢を描いて行こう…ずっと

この作品では、ミリシタに登場するアイドル「白石紬」さんがこの部分を歌います。「無限の」未来に向けて、強く飛び立とうとする白石紬さんの覚悟が伺えるシーンです。

動画では、中央の四角い扉のような部分から「空」が見えるような表現となっています。この部分を歌い終えた後、東海道新幹線の発車ブザーが鳴るとともに、白石紬さんが扉の前に現れて言います。

 

「行ってきます!」

 

そこからラストのサビが始まります。きょきょ今日も...という車内放送と共に、シーンが新幹線に乗り込むときの視点の映像に移り変わります。「アイドルになって飛躍したい!」という白石紬さんの夢と希望を、新幹線に乗るときの高揚感に乗せて表現していたということに気づきます。ここで僕は泣きます。

高速で通過するN700系を尻目に、我々はこだま東京行に乗り込みます。燦然と輝くN700 Supremeの文字。去年7月に登場し話題となった列車です。

個人的にはこだまN700Sというのが非常に感慨深い。東海道新幹線の沿線ながらのぞみが止まらない県で生まれ育ったので、こだまには特に馴染みがあり、東京に行くときの心高鳴る思い出が詰まっています。それを新型N700Sで追体験できるのは...もう涙腺が消滅してしまいました。

その後「なおこの列車では全て外の空気との入れ替えを行っています」という禍を感じさせる放送が流れます。列車が新横浜、品川、そして終点の東京に到着した後、この作品はついにラストパートへ突入します。

 

- 北陸新幹線

全力で輝きたい 今よりも明日もっと

最後は北陸新幹線。金沢をはじめ北陸地方は有名な観光地をたくさん抱えており、大変な途中下車シリーズにおいても人気の高い地域の一つです。そして、何といっても、この作品にとって大きな存在である白石紬さんの出身地です。北陸新幹線を一番盛り上がるところに持ってくるという構成力の凄さをひしひしと感じます。原曲に「輝きたい」という歌詞が存在するのも、北陸新幹線に「かがやき号」が存在するのも、そして紬さんが金沢出身であることも、全てが偶然だとは思いますが、この作品はそうした幾つもの偶然を掛け合わせた奇跡の作品だということが分かります。感動の絶頂です。

そしてここからの怒涛の映像で圧倒されつくしてしまいます。端的に言えば中央に駅名が表示され、周囲から駅周辺の観光地やグルメがスッと出てくる表現なのですが、記憶に残る色使い、精巧な切り抜き、次の駅へと移行するタイミング、どれをとっても一級品でプロの技であるとしか言いようがありません。美味しそうなブラックラーメンも、立山連峰の美しい景色も、高岡大仏が点滅して出てくるところも、「つるぎ」号が「つむぎ」になっているところも、堂々たる鼓門の姿も、全部大好きです。何でもいいからとにかく北陸に行きたくなる映像です。完璧にやられてしまいました。

障子型のドアが閉まり、列車は構内に引き上げます。かがやき518号東京行の車内で車窓に思いを馳せながら、作品は終わります。

 

最後にひとつだけ。この作品ではよく上り列車が出てくるという話をしました。あまり確実なことは言えないですが、これはこの作品が「旅を通してでしか得られない情趣」と「上京してアイドルになった白石紬さんの人生」を重ね合わせているからではないかと思います。旅をするワクワクの裏には、一人の少女のドキドキがある。この上なく素敵なテーマを持った作品だと思います。こんなに素晴らしい作品をありがとうございました。

 

- まとめ

ご本人から直々に「書いていただけたら喜びます」というお言葉をいただいたこともあってこの記事を書き始めたのですが、長々と読みづらい感想を書き連ねる結果となってしまいました。ひとつ確かなことは、この作品があまりにも好きすぎるということです。この記事が作品にとってマイナスになるようであれば、速攻削除させていただきます。

この記事ですが、個人的には表面的な感想に終始してしまったかな、という感じがします。失礼ながらアイマスに詳しくない私としては、作品の裏側の部分について深く汲み取ることができなかったかもしれません。ここはぜひご本人からの制作記を待ちたいところであります。

 

ということで、ここでこの記事を終わりにさせていただきたいと思います。ご意見ご感想等ございましたら私の方までお伝えいただければ幸いです。ありがとうございました。

*1:新交通合作のリニモパートに心掴まれました。

*2:Wikipedia:「JR西日本285系電車https://ja.wikipedia.org/wiki/JR西日本285系電車

*3:あとひとつがどうしても分かりませんでした。