第一歩

その動画に出会ったのは1年半前だった。曲の旋律に違和感なくマッチする車内放送の声、まるでホームにいるかのように臨場感溢れる音合わせ、ハイセンスで先進的な動画のデザイン。

電車に乗るという愉しさ。僕は、突然目の前に現れた魔法のような作品にまんまと魅せられてしまった。

 

 

そして、2017年12月16日。自身の誕生日に、人生で初めてニコニコ動画に動画を投稿した。大変な途中下車シリーズというタグをつけて。

 

途中下車というコンテンツ自体は小学生の頃から薄々認識はしていた。パソコンを弄り始めて、目も当てられないほどひどい黒歴史を量産していた頃に出会ったのだ。ミーハーな性格なので、再生回数の多い動画しか見ていなかったと思う。ただ、そこから中学卒業までは、途中下車というコンテンツに深く嵌まることはなかった。

 

そして去年、先の動画によって途中下車というコンテンツに強烈な興味を覚えるようになった。再び途中下車の積極的な視聴者となった僕が、動画を作ろうと思い至るまでにはそうそう時間はかからなかった。早い内に視聴者という立場から脱却して、感動の担い手になりたい、そう考えていた。と共に、処女作はRED ZONEを地元駅を題材に作ろうかなぁと安易に考えていた。どうせなら初めの一歩は早い内が良い、その為に最初は雛型MADから入るべきだと決めつけていた。

 

ある日、ふと東京に行こうと思い立ち、小田急線に乗った。いつも東京に行くときは小田急を使う。JRと所要時間が変わらない割に運賃が安いからだ。静岡の片田舎に住む僕にとって、東京に行くという行為には魅力を感じざるを得ない。そのためか、小田急に乗るときには他の鉄道路線とは違う特有のワクワク感を感じていた。

乗車中、ニコニコ動画を見ると、ふと1つの動画がトレンドに上がっていた。非常に技巧が凝らされた音MADで、シュールさに思わず笑いそうになるとともに、限りなくポップでキャッチーなメロディがいつまでも耳から離れなくなっていた。この感じ、鉄道路線に例えると......!

これだ、と思い、咄嗟に『小田急 Super Gero Ge-ro』とメモ帳に書いた。

 

これが、『Super Zama Za-ma』投稿のきっかけである。

 

実に1年もかかってしまった。素材集め、音声編集、動画編集、全部が一からの挑戦だった。満員の小田急線で己の羞恥心と格闘しながら車内放送を録音した。動画素材を集める為に、徹夜明けのクソ眠い状態で沿線を飽きるほど歩いた。音合わせやら動画編集やらも様々なサイトを参考にし、少しずつ少しずつ改良に改良を重ねていった。

 

時間はかかったが、今考えれば凄く楽しかったのだと思う。

今年は途中下車10周年という節目の年である。まだ二十数年という日本のインターネット史において、10年続くコンテンツというのはかなりの長寿コンテンツと言えるだろう。その長寿コンテンツを作る一人になれたことに、非常に喜びを感じている。

 

そんな事を考えながら、今、途中下車作者としての大きな、大きな第一歩を踏み出した。